大阪地方裁判所 昭和42年(わ)1008号 判決 1968年9月26日
主たる事務所
大阪市生野区新今里町七丁目一六番地
名称
医療法人敬仁会
代表者
理事長 火伏純雄
本籍
和歌山県橋本市橋本一丁目二〇番地
住居
京都市左京区岡崎法勝寺九三番地の七
菓子販売業
火伏秀雄
昭和五年七月七日生
右被告法人及び被告人に対する法人税法違反被告事件につき、当裁判所は検察官豊島時夫出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。
主文
被告法人医療法人敬仁会を罰金三百万円に
被告人火伏秀雄を懲役五月に
それぞれ処する。
但し被告人火伏秀雄に対し本裁判確定の日より二年間右刑
の執行を猶予する。
訴訟費用は全部被告法人と被告人の連帯負担とする。
理由
(罪となるべき事実)
被告法人敬仁会は大阪市生野区新今里町七丁目一六番地に主たる事務所を置き、病院及び診療所を経営し科学的で且つ適正な医療を普及することを目的とする資産総額一一〇〇万円の医療法人であり、被告人火伏秀雄は同法人の理事にしてその経理を担当統轄していたものであるところ、同被告人は被告法人の業務に関し、その法人税の一部を免れようと企図し、公表経理から事業収入の一部を除外し、架空の仕入や経費を計上するなどの不正な方法によつて所得の一部を秘匿したうえ
第一、昭和三八年四月一日より昭和三九年三月三一日までの事業年度における被告法人の実際所得金額は二四、〇四〇、七六〇円で、これに対する法人税額は九、〇二五、八一〇円であつたのにかかわらず、右所得金額中二二、三三七、三七一円を秘匿して昭和三九年六月一日大阪市生野区所在の所轄生野税務署において、同税務署長に対し、右事業年度における被告法人の所得金額は一、七〇三、三八九円で、これに対する法人税額は五五二、四四〇円にすぎない旨所得金額等をことさら過少に記載した法人税確定申告書を提出し、右秘匿所得に対応する法人税八、四七三、三七〇円は法定の納付期限を経過するもこれを納付せず、もつて不正行為により右同額の法人税を逋脱し
第二、昭和三九年四月一日より昭和四〇年三月三一日までの事業年度における被告法人の実際所得金額は二八、〇九一、五二四円で、これに対する法人税額は一〇、五一〇、八二〇円であつたのにかかわらず、右所得金額中二六、八九四、三七三円を秘匿して昭和四〇年五月三一日前示生野税務署において、同署長に対し、右事業年度における被告法人の所得金額は一、一九七、一五一円で、これに対する法人税額は三八一、〇九〇円にすぎない旨所得金額等をことさら過少に記載した法人税確定申告書を提出し、右秘匿所得に対応する法人税一〇、一二九、七三〇円は、法定の納付期限を経過するも納付せず、もつて不正行為により右同額の法人税を脱し
たものである。
(証拠の標目)
全事実につき
一、火伏純雄の検察官に対する供述調書五通
一、長滝谷茂雄の検察官に対する供述調書二通
一、松本輝雄の大蔵事務官に対する質問てん末書
一、登記簿謄本
一、火伏純雄の証明書
一、仲井婦美代の供述書
一、小池喜芳作成の銀行調査書類、簿外貸付金調査書類、架空借入金等調査書類、土地購入調査書類
一、被告人の大蔵事務官に対する質問てん末書(一三通)及び検察官(五通)に対する供述調書
一、押収に係る金銭出納帳四冊(昭和四二年押第七二四号5)未完成工事受入金帳一綴(同号6)
判示第一の事実につき
一、礒田幸男の大蔵事務官に対する質問てん末書
一、本郷兵三郎の大蔵事務官に対する質問てん末書
一、坂口勘三の大蔵事務官に対する質問てん末書
一、松田長造の大蔵事務官に対する質問てん末書
一、久木栄一の証明書(昭和三九年度申告分)
一、押収に係る元帳一綴(昭和四二年押第七二四号2)、仕入帳一綴(同号1)、経費帳一綴(同号9)
判示第二の事実につき
一、久木栄一の証明書(昭和四〇年度申告分)
一、押収に係る元帳一綴(昭和四二年押第七二四号3)、仕入帳一綴(同号4)経費帳(同号10)
(法令の適用)
被告法人らの判示各罪は、昭和四〇年法律第三四号法人税法附則第一九条により同法による改正前の法人税法第四八条第一項(被告法人につき更に同法第五一条第一項)に各該当するところ、右は刑法第四五条前段の併合罪であるから被告人につき所定刑中各懲役刑を選択したうえ、同法第四七条、第一〇条により犯情の重い判示第二の罪の刑に法定の加重をなし、被告法人につき同法第四八条第二項により各罰金額を合算した刑期金額の範囲内において、被告法人を罰金三百万円に、被告人を懲役五月に各処し、情状により被告人に対し同法第二五条第一項を適用して本裁判確定の日より二年間右刑の執行を猶予することとし、刑事訴訟法第一八一条第一項本文、第一八二条により訴訟費用は全部被告法人と被告人の連帯負担とする。
よつて主文のとおり判決する。
(裁判官 村上幸太郎)